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【ツアーレポート】春を味わいに太四郎の森へ

はじめまして。この春から入社した渡邊太一郎と申します。十勝にも新緑が芽吹き、景色が鮮やかになり始めた4月下旬。参加者として、山菜採りの旅へ行ってきました。この日の参加者は僕を含めて7名。全員が山菜採り初体験でした。森と人に出会い、学ぶ。季節を全身で感じるのにぴったりな旅を皆さんと共有したいと思い、文章を書いてみました。

◇この日のツアースケジュール◇
泉さんと一緒に太四郎の森を散策 → 旅チームスタッフと山菜採り → 小川で山菜を洗い、天ぷらとおひたしにして昼食 → イタヤカエデの樹液、クマザサのお茶を試飲

帯広市から南へ車で1時間半、広尾町紋別。泉幸洋さんがひとりで造り上げた「太四郎の森」があります。そこが今日の山菜採りスポット。到着して車を降りると、泉さんがうれしそうに待っていました。森へ足を踏み入れ、目に飛び込んできたのは、ささやくように輝く小川と、その周りにいきいきと咲き誇る野花。あふれる生命力が伝わってきて、まるで、森に歓迎されているような気がしました。

「名前に泉ってあるから水が湧いている土地に森を造りたかった」と、歩きながら語った泉さん。森を造る場所を探して15年、この場所に出合った泉さんはひとりで長い年月をかけて花を植え、古民家を建てました。僕はこの話を聴くまで、森は「造る」ものではなく、「ある」ものだと思っていました。きっと小川は森を造る泉さんにとっても、太四郎の森にとっても欠かせないものなのでしょう。

泉さんのお話に耳を傾けていると、目の前に広がる草木や花、これからいただく山菜のように、森そのものがいきものなのだと気がつきました。

一年中ほとんど毎日森へ通い、ここに咲く花を大切に、大切に育てている泉さん。「種類ごとに植える花の場所を選んでいますか?」という参加者からの質問に、「花は咲く場所を自分で選ぶから、そこに咲くか咲かないかは花次第」と、泉さん。そんなエピソードを聴くと、小さく可愛らしい花も逞しく目に映ります。

小川を跨ぐと、花の姿が少なくなり、日光を浴びて透き通った草が生い茂っていました。鳥のさえずりが響く中、ハサミと籠を手に、いよいよ山菜採り。

山菜は食べるだけで一度も採ったことがなかった僕。畑と違い、緑一面の地面から山菜を見つけ出すのには苦戦しました。旅チームの山菜リーダー・湯川隊長に山菜の特徴と採り方を教えてもらい、一緒に採っていきます。それが楽しくて、楽しくて。予備知識ゼロの僕たちでも安心して山菜を採ることができました。

山菜採りの旅、もちろん採るだけでは終わりません。いただいた命をおいしく食べます。小川の水が湧き出すところで山菜を洗い、森の中でそのまま調理へ。小川で洗われている山菜を見ていると、どうしても湧き水を飲みたくなり手でひとすくい。味まで透き通っていて、この森に芽生える草木が羨ましくなりました。

木々が風を塞ぎ、優しい日差しで暖まった森の中。イスを並べ、茹でたて、揚げたての山菜を口へ運ぶ。自分たちで山菜を採って食べることの贅沢さを、全身で感じることができました。

「森の中で山菜が食べられるなんて、最高ですね」                                       「イラクサおいしい!もう一回おかわり!」

それぞれがお気に入りの山菜を見つけ、お腹いっぱい天ぷらとおひたしを楽しみました。僕のお気に入りはヨブスマソウの天ぷら。食べ応えのあるシャキッとした茎とほのかに香る爽やかな葉。僕にとっての春の味になりました。

食後、特別にこの春採れたイタヤカエデの樹液を試飲させてもらいました。薄く白く濁った樹液は、まさに自然の甘味。おいしかったです。

旅チームスタッフが最後に提供してくれたのは、クマザサの葉っぱと湧き水で淹れるクマザサ茶。山菜もクマザサも、北海道に暮らしているとよく目にします。森で出合うことでもう一度しっかり向き合い、知ることができました。色も香りもはっきり出たお茶。苦味はなく、さらっと飲みやすかったです。

僕にとって旅とは、新しい場所で人と出会い、学ぶこと。泉さん、旅チームスタッフの皆さん、参加者の皆さんに出会い、山菜を採って一緒に食べる。日常生活で見過ごしていた花や山菜に目が向くようになり、この日学んだ山菜を見つけると、ちょっぴり得した気分に。まさに、僕が求めている旅そのものでした。この日お会いした皆さんには、またどこかで必ず会えるような気がしています。

春から秋にかけて、太四郎の森では、泉さんと森を散策して湧き水でコーヒーを淹れるツアー家常和さんが点てる自然茶をいただくお茶会のツアーも開催しています。

これから移り行く北海道の季節と共に、太四郎の森も姿形を変えていくでしょう。そのときが来たら、また泉さんとこの森に挨拶をしに行きたいです。山菜、ご馳走様でした。